日本歯科医学会について/ご挨拶
学会長ご挨拶 新年号

「FB DX時代を知る」
新年おめでとうございます。
今年の賀状には、『温故知新をモットーとします 時は戻り勢いよく進みます』と記しました。昨年、化石ハンター展を見学し、総合監修者の木村由莉先生のスケールの大きな「温故知新」に感化され、元気をもらい、この言葉が浮かんだのです。
ここにあげた新年号のタイトルについては、FBはFacebook、DXはDigital Transformationのことだと思われる方が多いでしょうが、今回、私が紹介したいのは、昔から存在するFBでありDXなのです。私自身、このFB(エフビー)、DX(ディーエックス)には70年近く馴染んでいます。そんな昔から、FacebookやDigital Transformationがあったはずもなく、ある意味同じように通信手段に関わるものですが、全く違う言葉です。FBはFine Businessで「素晴らしい」ことを、DXはDistanceで「遠距離」を示し、外国との交信を意味します。これらは現在も、とりわけ、アマチュア無線の通信において使われる専門用語、いわゆる電信の略符号ですが、会話を伴う電話通信でも多用されます。ところがいまではアマチュア無線が下火になっていることもあり、FBもDXもFacebookやDigital Transformationにとって替わられてしまいました。第24回日本歯科医学会学術大会においては、歯科イノベーションやSDGsが一気に広まりましたが、次の大会ではDXが主流になると予測されます。若い、いわゆるデジタルネイチャー世代は何の抵抗もなく受け入れるでしょうが、高齢者にはなじみにくい頭字語や略語ばかりです。これらが意味するところを理解できないと話が進まない、そういう時代が来てしまいました。後期高齢者の私はやっとイノベーションとはこれなのだという認識ができてほっとしていたのに、次から次へと新しい言葉が登場して苦労しています。頭字語の正式名称や意味を知ることと、それを頭や心で理解することとの間には大きな隔たりがあると実感しているこの頃です。
しかし一方、本質は変わらないのではとの思いもあります。手段の差はある、それを認めたうえで、それぞれの手段を得意とする人材が組むことによって、より良いコンビネーションが得られ、未来へ発展的に向かうことができると考えています。物事の進展においての多様性はICT、AIの世界だけで完成されるものでなく、やはりアナログの知恵も多様性のひとつとして加える必要があるのではないでしょうか。何事にも進化の起源があり、転機があり、躍進があり、退化しつつの方向転換もあったはずです。今ある手段が全協力してこそのTransformationでしょう。
卯年の新年を迎えて温故知新、今年はコロナ禍を克服し、仮想社会ではないFB でDXな旅もできるくらいに跳ね飛ぶことを願いましょう。
令和 5年 1月 5日
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