日本歯科医学会について/ご挨拶
学会長ご挨拶 令和3年新年号

「創生革命の年として」
令和3年が幕を開けました。
私が日本歯科医学会会長に就任してから8回目の新年を迎え、「学会長ご挨拶 新年号」も8本目となります。ことしは、8年前に抱いていた想いを振り返りながら抱負を語ります。
就任時のあいさつで、日本の歯科界からノーベル賞受賞者を誕生させるという景気の良いお話をしました。歯科界からノーベル賞受賞者が出れば、日本中の目が歯科に向き、ワーキングプアの代表格といわれていることが払拭されるとの強い想いがありました。これを契機に歯科を目指す若者が増え、歯科の研究・開発に多分野が参入してイノベーションが一気に進展するという、良いこと尽くめの内容でした。正月の初夢見て何という戯けたことをいっているのだ、雑煮の汁で顔を洗って出直せ!と言われそうな話でしたが、当時も今も、私は大まじめです。ついに昨年は、アフリカのマリ共和国で現地の人々に多面的な支援をされている歯科医師の村上一枝氏を、ノーベル平和賞候補者として推薦する一人とさせていただきました。実際、村上先生は2020年のノーベル平和賞の候補者としてノミネートされたのです。「逆転の発想」という意味においてかねてから注目していたイグノーベル賞は、歯科医師である明海大学渡部茂教授が2019年に受賞(化学賞)されました。
昨年は、新型のウイルス感染症の出現で、医療関係者が世界的に大注目される年となりました。残念ながらノーベル賞受賞のようにうれしい話題とは程遠かったですが、医療人一人一人、あるいはチーム活動の一挙手一投足が、また施政者の医療に対する方針が日々報道され、注目され、批評され、感謝されたのです。もちろん歯科も例外ではありませんでした。これまで歯科に関わって方々が、いま自分が置かれた状況について熟慮するばかりではなく、歯科ビジョンや歯科イノベーションロードマップの情報発信によって、もしかして歯科分野に活用できるのではないかと考え始めた他分野の方々も登場してきました。8年前の目標であったイノベーションの推進や若者の歯科医療への注目などは、思わぬ形で展開する予感がします。
今年の9月23日から25日の3日間、第24回日本歯科医学会学術大会がオンラインで開催されます。オンラインのコントロールセンターを神奈川県横浜市のパシフィコ横浜に設置して、開会式、開会講演、公開講演などは無観客で現地開催とし、ポスターセッションを除くすべてのプログラムをオンタイムで実施いたします。事前収録された映像を含めて、発表者はさまざまなところからオンタイムで出演します。先述の、ノーベル平和賞候補にノミネートされた村上一枝先生も、公開フォーラム「ダブルキャリアのすゝめ」に出演してくださいますし、イグノーベル賞受賞の渡部茂先生には「逆転の発想でイグノーベル賞へ挑戦しよう(仮題)」のテーマでの企画講演をお願いしました。
この様式での開催決定に至るまでには、大会準備委員会をはじめ、運営会社や学会の事務局、そして新しく学会に設置したオンライン推進ワーキンググループの方々の多くのエネルギーと覚悟の積み重ねが必要でした。このエネルギーと覚悟は、多くの参加者に意義と感動をもたらし、そして目標通り、歯科界活性化の大きなステップにならなければなりません。
2021年は歯科界の大きな行事である日本歯科医学会学術大会が開催される節目の年ですが、加えてこれまでにない挑戦を実行するという新たな目標ができました。それは新型コロナウイルスとの戦いで人類が生き残っていく知恵を求める世界の潮流でありましょう。これを私は創生革命と宣言します。新しい時代の幕開けです。
令和 3年 1月 5日
*第24回日本歯科医学会学術大会の詳細はHPの「ホーム」で適時ご案内しています。
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