日本歯科医学会について/ご挨拶
学会長ご挨拶 令和元年6月号

今期2年間そして6年間の活動成果
8020運動の究極は8028だという人と第三大臼歯も活用して8032という人がいます。車のナンバーに8020を付ける歯科医療関係者は多いのですが、すでに市ヶ谷の日本歯科医師会会館の車寄せでは8028に変更している車にも出くわします。同じところで8000のナンバーに見たときはとっさに総義歯を得意にしている歯科医師か歯科技工士の車かと思いました。とにかく30年以上にわたる関係者の努力で「8020」は社会での存在場所を確保しました。
8020運動は公益財団法人8020推進財団のこれまでの展開によるところが大きく、今や国民的な運動になっていますが、ここに至る臨床の現場での日本歯科医師会の役割、そして学術的貢献として日本歯科医学会の支援も大きいものがありました。とりわけ分科会としては日本老年歯科医学会会員の協力が重要でした。
愛知県において、目標を残存歯20本以上とする、8020運動が1989年に開始され、昨年の12月には30周年記念式典が催されました。来年に30周年を迎える、1990年に設立された日本老年歯科医学会はそれに呼応して立ち上がった分科会と理解しています。もちろん今日の超高齢社会における歯科的対応を見据える目的もあったでしょう。
令和元年6月7日に仙台で開催されました第30回学術大会の懇親会に出席いたしました。その時の挨拶をご紹介します。
『第30回日本老年歯科医学会学術大会の開催おめでとうございます。懇親会にお招きいただきました米山武義大会長、佐藤裕二理事長をはじめ本分科会のみなさま方に厚くお礼申し上げます。
2014年の第25回学術大会の懇親会で私は、高齢者の口腔の中は子どものころからの歯科的対応のアウトカムゆえに、日本老年歯科医学会の学術プログラムに小児歯科関連の講演を入れた方がよいとお話ししました。それに呼応してか、第26回学術大会では小児歯科に関わる何らかの演題が加えられたとお聞きしました。当時、日本歯科医師会は高齢者の歯科医療に力を入れていましたので、日本歯科医学会は子どもの口腔機能の問題に着目して、その歯科的対応が公的医療保険のもとで実施できるように2013年に重点研究委員会を立ち上げて展開してまいりました。一方、この分科会では口腔機能の低下に関わる新病名導入めざした大きな活動が開始されました。その成果は、昨年の4月の診療報酬改定において、ライフステージのもとに連携した形での口腔機能管理として、2つの新病名が導入され、公的保険のもとで国民は医療として利用できるようになりました。その後の流れはごらんのとおりです。現在では、医療にとどまらず、生涯にわたる歯科的対応は口腔健康管理という概念で推進されています。
これらの話はここに集まっている方にはわかりきったことですが、近年の歯科界においては実に画期的な出来事です。
ところで「月曜日に札幌にいらっしゃる方はおられますか?何があるのですか?」「そうです。日本小児歯科学会の学術大会が開催されます。」今、手を挙げられた方々はわずか数日間でまさにライフステージに応じた歯科医学、医療の最新の学びの場に立てるのです。分科会間の横糸づくりを推進している私にはまさに理想的なタイミングです。ライフステージ、口腔健康管理、健康寿命の延伸がこれら二つの分科会の共通キーワードですね。みなさま方の頑張りによって、今や、歯科界全体にとどまらず社会的キーワードとなりました。引き続き、大きな展開をお願いいたします。
あらためてお招きいただきましたことに感謝いたします。ありがとうございました。』
私は6月10日に札幌での第57回日本小児歯科学術大会の懇親会に出席します。挨拶の内容はすでにお気づきのように日本老年科医学会での挨拶と共通のものを予定していますが、一つ思い切った提案をしてみるつもりです。それは近い将来、日本小児歯科学会と日本老年歯科学会とが共催する学術大会開催を期待しているというお話しをすることです。分科会間の横糸づくりをますます加速していくことが、学会の大きな使命でもあります。
私は、令和元年7月からも学会長として次期の2年間を務めさせていただきます。これまで日本歯科医学会の舞台で、口腔健康管理のもと、ライフステージに応じた口腔機能管理の事業を粛々と推進してまいりました。これは6年間の大きな事業目的でした。これらの概念が国民の中でますます醸成されるよう、貢献してまいります。新執行部の紹介は、改めて「学会長ご挨拶」7・8月号にて行います。ひとまずこの号をもって3期目の最後のご挨拶といたします。引き続きよろしくお願いいたします。
令和元年 6月 9日
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