日本歯科医学会について/ご挨拶
学会長ご挨拶 平成27年新年号

「松樹千年翠」
新年明けましておめでとうございます。
平均寿命と健康寿命の差は女性でおよそ13年、男性でおよそ9年と報告されています。この差は、健康上の問題で日常生活が制限される要介護状態の期間を示すもので、短いに越したことはありません。政府は、2014年5月に成立した健康医療戦略推進法に基づいて、健康寿命を2020年までに1歳以上延ばすなどの目標を掲げました。国家の安泰と医学の進歩によって平均寿命がのびますから、健康寿命をより大きく延ばさなければ、その差は縮まらないのです。
すでに、地域の特性に応じて、さまざまな分野からの対応が実行されています。歯科においては、歯科口腔保健の推進に関する法律に絡めた対応が適していると考えられています。いわゆる地域包括ケアシステムの導入は、人的、物的資源の足りない部分を明らかにすることも期待できる方策です。歯科は現在、診療所形態で医療を提供していることが多いのですが、これからは、地域の多職種が連携した診療形態に口腔領域の専門医として参加していくと思われます。なによりまずは、それに加わる人づくりでしょう。2014年の第107回歯科医師国家試験から『「歯科口腔保健の推進に関する法律」の制定等を考慮した歯科疾患の予防管理に関する出題』として、歯科口腔保健の推進が国家試験の出題基準に加わりました。これによって卒前教育、歯科医師臨床研修、そして生涯研修と続く、シームレスな学習体系が整いました。
学会は、各分科会と協同して、生涯研修システムの構築や新病名の創生をはじめとして、「社会に求められる新しい歯科の需給」に応じられるさまざまな供給体制の構築を推進します。
ことをなすにはそれなりの努力が必要ですが、乙未(きのとひつじ)の今年は、未来を見据えて明るく前進してまいります。「乙」は植物が曲がりくねりを余儀なくされながらもそれに屈することなく伸びていくさまを象徴するそうです。毎朝、犬の散歩で、「乙」のように大きく曲がった松の横を通ります(写真)。乙未の元旦、倒れても枯れずに上に向かって成長する樹木の逞しさに、日本歯科医学会会長としてなすべきことを全力で果たそうという思いを新たにいたしました。
みなさまにとっても、この一年が明るく実り多い年となりますようお祈りいたします。
2015年01月05日